ソプラノ
ああ。とってもすてきな本を読むと、
胸がいっぱいになる。
わたしは本が大好きやけど、ぜんぜんくわしくなくて、
古典というのか、なんかそんなのぜんぜん知らなくて、
これで好きって言えるのかと、
だれに対してかわからないけど勝手にひとりで思って、
あかん、こんなんじゃ声に出して言えないって、また意味もなく思ったりもするけど、
でも、好きやな。これはまちがいなく愛です。
『起きている時も寝ている時も、仕事をしている時も遊んでいる時も、
ゴルフや歌や水泳をしている時も、ああ私は幸せだ、
生きていてこのように暮らしていて幸せだ、と思えるように、
すべてを大切に生きてゆきたいと思う。』(私の小さなたからもの/石井好子)
こないだの日曜日、バイト先で「私の小さなたからもの」を買って、
さっそく帰りの電車のなかで読んでいると、
「あ、あのちょうちょかわいいねぇ」と言う、
ちいさい子のかわいい高い声が聞こえてきて、ぱっと前の座席を見ると、
2歳くらいの女の子がわたしの方を指さして言っていて、
「ん?」と思い、「ああ、そういえば」と思った。
わたしが持っていたその本の表紙は、
言われてみればちょうちょのようなかたちをしたものがいっぱい書かれていた。
水色とかピンクとかきみどりとか黄土色とか青とかその他いっぱいの。
だから今思い出して、こう書いていると、
その色たちが電車のなかでふわふわしているように思い出す。
女の子の声も。