おいしそう、小籠包

電車の広告に、小籠包の写真が載っていて、おいしそうやなぁ、とみていた。

近所にあるホテルの広告で、ビュッフェ3500円と書いてある。

ビュッフェってなんやっけ、バイキングみたいなんかな、と思ってじいっとみる。

3500円高いなぁ、とじいっとみる。おいしそうやなぁ、ってじっとみる。


それで、もし、家に帰っておかあさんがいて、

小籠包おいしそうやったで、行こうやって言うと、

100%の確率で行くやろうな、って考えてた。高いけど、たまにはなぁって。

多分、こんなん好きやと思う。

でも、100%行くことないんやな、って思って、

もう、この先一生、行かれへんねやって、改めて思って、

そうか、そうか、と帰ってきた。


おかあさんのことを話すとき、ちょっとしゅんとしてしまうのがいやだ。

しゅんとしたのを笑ってごまかしたり、

ちゃんと話そうとすると、泣いて鼻水がすごいことになるし、いやだ。

なんか自分でデリケートな感じにしてしまっているけど、

もっと陽があたるようにしたいな。

けっこうおもしろい話もたくさんあったはず。

と思って思い出すものは、くだらなさすぎてここには書けないな。笑えないくだらなさ。かなしい。


このあいだ、いしいしんじさんの「ある一日」を読んでいた。

この小説は、きっといしいしんじさんのお子さんが産まれた日、その日一日を小説にしたもので、

全部がほんとうのことなのかわからないけど、ほんとうなのだろうな、と思っている。

これを読んで、おねえちゃんから聞いたことを思い出した。

わたしがおかあさんのお腹にいたころ、多分6カ月とかそれくらいのとき、

トイレで、でっかい血のかたまりが出たそう。

それで、絶対赤ちゃんが出たんやと思った、って言ってたで、でもちゃうかってんなぁ、

と、言ってた。

ちゃうかってんなぁ。わたしはここにいます。