左と右
さっき、チョコレートを買いに外へ出て、
少し遠いほうのスーパーへ向かって歩いていたら、
後ろから、黄色いペットボトルのケースをななめ掛けにした、
まだ小学生になっていないくらいの男の子がふたり、
ぺたぺたと音をたてて走って、わたしを追い越して行った。
わたしは、子どもの走る音って、ぺたんぺたん、っていうんやなぁ、へえ、
と思いながら、後ろ姿をみてた。
その子たちは、赤いポストの前で止まって、なにか話していた。
その子たちの横を通るとき、
なあ、あのひとにきいたらいいんちゃう? という声が聞こえてきた。
あのひとってわたしのこと? と思って、
かわいいから、なんでも聞いて、というきもちで、なに? と聞くと、
あの、左ってこっちですか? と、
ポストの投函口の左側をさしながら、すごく小さいかわいい声で言った。
うん、左そっち、と言うと、左側になにか郵便物を、よいしょという感じで入れて、
またぺたぺたと音をたてて走ってどこかへ行った。黄色い夕方。
左ってこっちですか、って、いいなぁ、
左そっちですよ、と思いながら帰ってきた。