やさしいひとたち

風邪をひいてしまった。

からだは全然しんどくないけど、咳がひどくて、

常に、ではないけど、突然ひどくなる。ひいってまでなってどうしようもない。

おなかが筋肉痛になった。


このあいだ電車に乗っていると、斜め前のひとが咳きこんでいて、

そのひとのとなりに座っていたおばちゃんが、「これよかったらどうぞ」と、飴をあげていて、

咳きこんでいたひとは「ありがとうございます」とぺこぺこあたまを下げて、

小さい袋をぺりっとめくって飴をなめた。

わたしはその光景を見て、「咳のときは飴がいいんや」と思った。

だから咳きこむと、その光景を思い出してる。



今日は仕事が少なくて、早く帰っていいよ、と言ってくれていたから、

7時半に早々と帰ってきた。

おなかがすいていたから、ごほごほ咳をしながらもいっぱい食べた。

お風呂にお湯をはっているあいだに、

佐内正史さんの「シャンプーリンス」を、ちょっと見ていた。

写真だったり、詩だったり、一行詩だったり、絵や、落書きみたいな文字とか、いろいろある。



『やさいたべる時 マヨネーズってすきだなっ て思う』

『あとでまたうがいしよう』

『ふねがかいがんからあまりはなれない』

『フィヒアランス』

『カルシウムをとってよくねむる BGМにゆだねよう 考えすぎることもあるし』


とか、書いてある。

お風呂から出たら、あったかい牛乳を飲んで寝ようと思った。



お風呂の中で、なかむらさんという友だちが話してくれたことを思い出した。

なかむらさんの職場にはバングラデシュ出身のひとがいるらしい。

それで、なかむらさんが体調が悪くて早退したとき、

それを知ったバングラデシュのひとは心配をして電話をかけてきてくれたらしい。

「牛乳にはちみつを入れて飲むとよいです」と教えてくれたらしい。


のちのち聞いてみると、そのバングラデシュのひとは、

バングラデシュに住むそのバングラデシュのひとのおかあさんに電話をして、

体調が悪いときはどうしたらいいのかと聞いて、聞いてから、

なかむらさんに電話してくれたらしい。


わたしの家には、はちみつがないから、

牛乳を電子レンジであっためて今飲んでる。これを飲んだら寝る。