おかぴ

今日、ぼんやりと歩いてバイト先に向かっていると、

ちょっと遠くのほうに、立ち止まって手を振るひとたちがいて、

ん、と思ってよく見てみると、おかぴだった。

おかぴと、おかぴの子どものはなちゃんと、おかぴのおかあさんだった。

「おーい」と言ってた。おーい、って。おかぴらしいなと思う。



おかぴは小中学校のときの同級生で、ずっと知っていたけど、

中学3年のときに、塾で一緒になって、いっきに仲良くなった。

仲良くなったと言ってもいいと思う。

中3の夏というと、わたしの中ではおかぴを思い出す。

おかぴは、今は結婚して熊本に住んでいるらしいけど、

こっちに帰ってきてるときは、けっこう会う。

会うといっても約束して会うんじゃなくて、今日みたいに偶然会う。

「ははは、また会ったなぁ」と言ってた。うんめいかと思う。

わたしは、うわーっとうれしくなって、おかぴとはなちゃんの周りを一周してしまった。

はなちゃんはおかぴにそっくりで、「ははは、一緒やなぁ」と言うと、「一緒やろ」と言ってた。


中3の夏といえば、14歳か。15か。ちょうど半分。

今でも覚えているのは、

当時人気絶頂だったラルクアンシエルが、近所で野外ライブをすると知って、

ミーハーだったわたしたちは、「有名人が来る!」と、塾に遅れてまでも、

ちっちゃく、ちょっとだけ見えるラルクアンシエルを暑い中見に行ったこととか、

わたしの塾の問題集の余白はおかぴの落書きでいっぱいやったこととか、

夏休みに近所のレンタルビデオ屋で、ジェイソンとか、

何か人形のチャッピーやったかそんなのの怖いビデオを借りてきて、

おかぴん家の夜のリビングをふたりで占領したこと。

でも、昔から夜が弱いわたしは怖さよりも眠さが勝って、途中で寝て、

ほんで、ちょうど終わるころに目を覚まして、夜中の3時にカップ焼きそばを食べたこと。

おかぴは全部観たって言ってた。へへ。


「またね!」と言って、わたしはもりもりと元気になってにやにや仕事した。

今もにやにやしてる。