本屋の

最近、領収書を頼まれるたびにどきどきする。身がまえる。

たまにカタカナの文字でさえ出てこないときがあるから(宛名の)、

わたしの頭はどうなってるんやろう、と思う。やばいね。


わたしは普段、本屋の中の隅っこのコーナーに一人でいてるけど、

最近、スタッフが少なくなって、だからわたしも、いつもとは違うところに行ったりしていて、

なんだか新鮮だったりしている。


今日は、真ん中のレジに1時間ほどいた。

その横でずっと、「申し訳ございませんが、」とあやまりの電話をかけているスタッフがいて、

それは、多分、注文できるか確認中の商品が注文できない商品だったことのお知らせの電話で、

その電話を切ったあと、その人が、隣にいたわたしに、

「うちから電話だったんで、注文できたのかと思ったみたいで、喜んでいたのに、

こう告げるの、心が痛かったです」と、ぼそっと言った。


こう、書いただけでは、わかりにくいかもしれないけど、

その言い方があまりにもかわいくて、わたしは、そうか、心が痛かったのか、と思った。


名前を書きたいけど、一応、Nさんにしとこう。

Nさんは、多分、去年の春の新卒で入社したんやったかな。もっと前やったかな。

もう半年以上経つのに、わたしは、Nさんの名前と顔くらいしか知らない。

ほぼ毎日会っているのに。

話し方のイントネーションで、大阪の人ではないのかな、とはわかるけど、

どこ出身かも知らない。勝手に静岡辺りではないかな、と思っている。

明日聞いてみよう。


Nさんは、古本を店出しする途中で、ちょっとにやにやしながら、

「これ、あとで買うので」と取り置きをしているのを、何度も見ていたから、

ああ、本が好きなんだな、と思っていた。

この間は(この間といっても3カ月くらい前かも)、

俵万智さんの歌集を買っているのを見て、

おお、短歌好きなんやね、わたしも好きだよ、とうれしくなった。

そのことをNさんに話そうと思っていたけど、忘れていた。今思い出した。

この間は(これは2週間くらい前)、

わたしが帰るとき、ちょうど休憩中のNさんが事務所で本を読んでいたので、

なにを読んでいるのか気になるから、聞いたら、

「『書店ほどたのしい商売はない』です」と言って、へへっと笑っていた。


かわいい。