西さん

西加奈子さんの「ふる」を読んでいる。

まだ途中やけど、西さんの書いたものを読むと、びっくりする。

びっくり。これが一番近いと思う。


昔の自分とか、今の自分とか、どこへ行ってもおる自分、ついてくる自分、

からだが移動したら、もちろん自分のなかのものも移動して、

今までの記憶が、動いた場所に動く。からだと一緒に動く。

そういうとき、俯瞰してみてるというよりも、

なんかもっと近いけど、近すぎないというか、

ひとりやけど、ひとりじゃないというか、なんかおる感じはわたしもしていて、それは自分で、

でも、そんなん、言ってしまえばちょっと違ってしまう。

けど、それを書いてる気がする。

もっといろんなことも書いてる。




西さんには一度だけ会ったことがある。

会ったというか、見た。

3、4年前、多分、寒かったから冬やったと思う。

おとうとが通っていた大学に来るというから、行った。

講演会というやつなんかな。


そのころ、わたしは西さんの小説が、ほんとうに大好きで(今も!)、

毎日、好きな箇所を読み返していた。うおーと声に出してしまいそうなくらい好きだった(今も!)。

だから、せっかく西さんに会えるのだから、手紙を書いて渡そうと思って、

2時間も3時間も、便箋に向かったけれど、書けなかった。



おとうとが車で行くと言うから、乗せていってもらった。

大学に着いて、おとうとは他の授業があるからとどっかへ行ってしまって、

西さんの講演までも、まだまだ時間があったので、

わたしは大学生に混じって、マーケティングの授業も受けた。



さあはじまる! というとき、前の扉から西さんが先生みたいな人たちと一緒に入ってきて、

わたしは写真を見たことがあったから、あ、西加奈子だ! と思って、見ていた。

みどり色と濃い水色のあいだくらいの色の服を着て、髪をお団子にしていた西さんは、

前の方の席に座って、きょろきょろしていた。

その目は、いい意味で堂々としていなくて、あ、西加奈子だ! と、また思った。


講演はとてもよかった。

ああ、あのひとがあの話を書いたんや、と思った。

ほんで、今も、ああ、あのひとがこれを書いたんや、と思う。




それから、その講演が終わったあとも、おとうとはまだ授業があって、

わたしは、終わるまでなにしよう、とうろうろしていたら、

映画研究会みたいなひとに誘われて、大学生の作った映画を観た。

それは、チェンソーであたまを切って、脳みそを食べる話やった。