「プックリ・チッカリ・ピッポドゥ」

朝、目を覚ました時からこれを読みたかった。

なんでだろう。急にあれが読みたいと思ったのだった。

永井宏さんの「プックリ・チッカリ・ピッポドゥ」。本棚の奥にちゃんとあった。

リュックに入れて、家を出る。駅まで2分。持っているだけで、にやけてくる。


『君に愉快な名前を教えよう

 プックリ・チッカリ・ピッポドゥ

 この名前を3回唱えると
 
 頭の上に、三角の帽子を被った男の子がやってきて

 鼻の先っぽに何か付いているよと訊いてくる

 君にはプックリ・チッカリ・ピッポドゥが見えないから

 一生懸命、目を頭の方に吊り上げてそこに何がいるのか見ようとして

 そして鼻の先っぽに何か付いているのかなあなんて思って、そこも見てみる

 でも、何もなさそうだから

 つい、何にも付いてないじゃんと思ってしまうんだ

 すると、ほら騙されたって

 頭の上でケラケラ笑う声が聴こえる』



この詩集は横書きで、紙はほんのりと黄ばんでいる。文字はちょっと薄い黒。

紙質のせいか何なのか、鼻を近づけると変な匂いがする。



『で、君はくやしいから

 手で、頭の上のプックリ・チッカリ・ピッポドゥを追い払おうとする

 すると、ほら君はプックリだから動きが遅くて、そんなんじゃ無理、無理と言われてしまう

 エッ、と思って、もう一度、頭の上を手で素早く追い払おうとする

 すると、今度はもっとチッカリやれよと聴こえる』


ふふふ、と思いながら、仕事に行った。




帰り、雨も風もかみなりもすごかった。

電車に乗っていると、駅に着いて扉が開くたびに、雨が電車の中にまで入り込んでくる。

みんながいつもと違って、きょろきょろしていた。

こんなときは知らないひとともよく話す。

「かみなりこわいですねー」「雨すごいねー」なんていって。

わたしはこの本を手に持っていたから、雨に濡れてしわしわになってしまった。


いつかわたしはこの本のしわしわをみて、

今日の電車の中のものすごい雨とかみなりのことを思い出すんやろうか。

それとも、また電車の中にいるときに雨がすごくなったら、

プックリ・チッカリ・ピッポドゥのこと思い出すんやろうか。

どうなんやろうか。