きいろいもふもふ
パソコンのとなりには、全身が黄色いもふもふで、
黒目はころころと動いて、鼻は水色に白の水玉のボタンでできた子がいる。
京都のすてきなパン屋さんで買った。二階は雑貨屋さんだった。
あたまのてっぺんからはピンクと白の毛糸が輪っかになって出ていて、
それは、黄色いもふもふの中に繋がっている。
そのピンクと白の毛糸の先の、黄色いもふもふの中に隠れた部分には、キーホルダーの輪っかがついている。
つまり、これは黄色いもふもふの中に鍵をしまえるキーホルダーなのだと思う。
わたしは今も、この子がいたそのパン屋さんの二階をすぐに思いだすことができるし、
わたしの家からその店までの経路もわかる。
わたしが買うまで、この子が閉店した後の暗い店で毎晩じっとしていたのだって思い浮かべることができるし、
お客のだれかが「かわいいー」なんて言って、手に取ったところなんて、見なくたってわかる。
だれかが編んでいたときの金色のかぎ針も、うっすらとうぶげの生えてる腕まで見えそう。灯りも。
そして今、この子はわたしの家にいる。
朝起きれば昨日と同じ場所にいる。バイトから帰れば、たまにこてっと倒れている。
ころころと動く黒目は今、じっと下の方を見ている。