駅のまわり

朝、たまに駅の改札のところでみかけるひとたちがいる。

最近みないけど、こないだは夜みかけた。

そのひとたちは、きっと夫婦で、旦那さんは多分目がみえてない。

杖というのかな、それを、左手か右手に持って、ななめ前の下側に向けて、

もう片方の手を、奥さんの肩にのせて歩いている。

歩く速さはとても速い。

ふたりともなにか話してるのかは遠くからみるわたしにはわからないけど、

ふたりともちょっと笑っているようにみえる。

改札に近づくと、「じゃあ」(言ってるのかは知らない)という感じで、

旦那さんは改札をすんなり通って、ひとびとにまぎれる。

奥さんもすんなり早歩きで元来た道にもどっていく。

それがほんとうに一瞬のできごとで、ほう、とみているわたしは、

「あれ、いつものところにピタパがない」と、改札のそばでもたもたしている。


こないだは夜、短い横断歩道を渡ろうとしたら、

幼稚園の制服を着た男の子が、ひゃははー、と元気よく走ってきて、

ふと、みると、その子のうしろに朝のふたりがいた。暗いなかにあのシルエット。

お、朝のひとたちや、と、わたしはなんとなくサザエさんを思い出した。