シャンプーのひとの日常
このあいだ、髪を切りに行って、
シャンプーをしてくれた若い男の子から、一瞬、お酒の匂いがちょっとした。
このひと、昨日けっこうお酒飲んだんやなって、一瞬思って、忘れた。
それで、席に案内してくれるとき、前を歩くそのひとの、
半袖から出ているひじに、かさぶたになりきっていない傷があった。
血や、そんなとこ、どうやってケガしたんやろって思って、またそれも忘れた。
それで、切ってもらって、
切ってくれたひとが、忙しそうで、かわりにまたそのシャンプーのひとが来て髪を乾かしてくれた。
そのひとは、ドライヤーを持っている腕を少しまわしながら、首をかしげていた。
「ぼくね、昨日、お酒飲んでて、けっこう飲んでしまって、」と言ってた。
ああ、やっぱり、とおもしろかった。
「それで、自転車で帰ってたんですけど、思いっきりこけてしまって、ここケガして」
と、さっき見たひじを見せてくれる。
「あ、さっき、なんか血でてるなぁと思いました」と言った。
「え? ここ、わかりました? 血でてると思いました?」と笑ってた。
「こんなケガしますか?」と聞かれる。
「しないです」と答えた。
「それでね、今日なんか、肩がおかしくて、これ、昨日こけたせいか、
おととい、ジムでトレーニングしすぎたせいかどっちかなって思ってるんです」と言ってた。
「どっちでしょうね」と言った。
「どっちなんでしょうかね」と言ってた。