女子高生たち
昼、バイトの帰りに電車に乗ると、わたしの前の座席に、女子高生やろうか、女子中学生やろうか、
どっちかわからないけど、あまりまじめそうでない、髪の色が明るい女の子たちが三人座っていて、
スカートをすごく短くしているのに、変な座り方をするから、スカートの中が見えそうになってた。見えてたかもしれない。
おお、と思って、目のやり場に困るんやけど、と思いながら、わたしはかばんの中から本を出してぼんやり読んでいた。
女子高生か、女子中学生の子たちは、ずっと話をしていた。
「なあ、あの学校通うってなると、毎日この電車乗らなあかんくなるのいややねんけど」
「ほんまにいやや。JRにしてほしい」
「なんか臭ない?」
「臭いし、暑い。やばいなこの電車」
とか、言っていた。
確かに、臭くて暑かった。むわんとしていた。でも、いつもこうじゃない。
もうちょっと臭くないし、こんなにも暑くない。今日はたまたまそうやった。多分、雨のせい。
携帯を触りながら、
「あの子らもう着いたらしいで、めっちゃ早ない?」
「うちらももうすぐ着くんちゃうん? あと何駅?」
「えーっと、あと3駅や。早っ」
「はっやー」
とか、言っていた。
ああ、やっぱりわたしと同じ駅で降りるんやな、って思った。
「なあ、この電車乗ってたら、小学校のときさぁ、奈良に遠足行ったこと思い出せへん?」
「なにそれ」
「奈良、行ったやん。あのめっちゃだるかったやつ」
「あー、ありえへんくらい歩かされたやつな」
「あかん。めっちゃ思い出すわー。いややったわ。あれ最悪やったな」
とか、言っていた。
この子たちが小学生って言っても、多分たった3、4年前のことなんやなぁ、と思った。
今の時期に学校見に来るのって、もう高校生の歳なんかな、編入なんかな、と思った。
ほんで、駅に着いて、同じ駅で降りた。
「えー、どこどこ、学校どこ?」
「あっこちゃう?」
「近っ」
と、言っていた。
階段を下りるときも、その子たちはわたしの前を歩いていて、
「なあ、奈良行ったときなー、シカ、やばなかった?」
と、笑いながら、また奈良の話をしていた。
「シカに弁当食べられたし。シカ、めっちゃやばかったし」
と、言っていた。
この子たちは毎日この電車に乗って、ここで降りて、あの学校へ行くことになるんやろうか。知らない。