光浦さん
オアシズ、光浦さんの「男子がもらって困るブローチ集」を買ってしまった。
このあいだ、何かの雑誌を立ち読みしているときに(何かは忘れちゃった、)、
『ダサい、で済まされるか、世間がおもしろがってくれるかのギリギリのところを攻めたい』(ちょっとちゃうかも)
と書いてあったのを見てから、ずっと気になっていた。
フェルトで作ったブローチは、まあ、かわいかった。
かわいかったけど、ちょっとかわいすぎる。男の人はいらないかもしれない。
わたしはそれよりも、あいだあいだに挟まれているエッセイだったり、ちょっとした文章だったりが好きだな、と思った。
『年に一度、女の子が好きな男の子に手作りのマスコットをあげる。そんな日が立派な記念日になる頃、
わたしはおばあちゃんになっているでしょう。近所の子どもたちを集めて、手芸を教えます。小学生や
中学生の恋の悩みを聞きながら、お得意の記憶どろぼうをし、まるで自分が恋しているような気分になって、
青春時代を取り返すかのように、架空の彼を想い、頬を赤らめながら針を刺します。そんなおばあちゃんになりたい。』
わたしが小学5年生の頃(もしかしたらもっと前かも)、
町内会でバザーのような催しがあって、そこで、ブローチを売っているおばあちゃんがいた。
野間のおばあちゃん。野間さん。
そのブローチは、フェルトではなくって軽い粘土みたいなもので作られていて、もちろん野間のおばあちゃんの手作り。
ちいさい花びらを何枚も重ねて作られた、赤や紫やきいろいブローチはちょうかわいかった。
何のながれだったのかは、よく覚えてないけれど、
後日、みゆきとさほちゃんとさおりちゃんとわたしの四人で、野間のおばあちゃんに作り方を教えてもらいにいった。
わたしも作った。いびつな紫色のブローチ。探せばきっとどこかに今もあるはず。
野間さんは、それからすぐ、娘さんたちと一緒に住むためにここを離れた。
野間さんはひとり暮らしだったからかな。
でも、それからも野間さんは手紙をくれたり、お土産で黒砂糖をくれたり、まりもをくれたりした。
お祭りでわたしたちがだんじりの鐘をするときは、電車に乗ってわざわざ見に来てくれた。
ああ、野間さん!野間のおばあちゃん!と思い出したよ。ありがとう、光浦さん。
わたしの本棚には、野間のおばあちゃんにもらったこびとのお手玉が今もある。もちろん野間のおばあちゃんの手作り。
それから、光浦さんの本で、もうふたつ、気に入っているところがあって、
『ニードルフェルトをするにあたっての4つのアドバイス、その4 親バカになろう
自分の作品はアホのように褒めましょう。自分の作品を可愛がりましょう。
ニードルフェルトの最大の良さは足し算引き算ができる、ということです。気にいらなければ、足せばいい。
いびつな形も足して刺してごまかせます。それでも気に入らない場合は、最悪、力ずくで引っ張れば取れます。
親バカになって、納得いくまで、可愛くしてあげましょう。』
これと、
『役に立つものを作れない女』。
いいなぁ、好きや、光浦さん。
【この記事を書いてから、もう一度見ました。光浦さんのブローチ。わたしは『妖怪 件エンブレム(メス)』が好きです。】