手紙

人が手紙を書く姿というのはとてもいい。

先週、ちょうど先週の日曜日、わたしはおばあちゃんの家にいた。

いとこがお嫁に行ってからというもの、おばあちゃんの家は、

行くたびになんだかすっきりしていっている。

いとこの子供だから、おばあちゃんやおじいちゃんからしたら、ひ孫になる子達の

感心してしまうほどすばらしく色とりどりの絵を飾っているのに、

なんでだろう、と思う。

しんとしていて、風通しがよくて、なつかしい白檀のような匂いがして、

悪いものを気付かないほどさりげなくのけていってるような。


ちょうど、来る途中で寄った「夢二郷土美術館」で、

夢二に感化されていたわたしは、夢二の本でこんな文を見つけた。


『部屋や机のまわりは、あなたの治めていらっしゃる国のようなものです。

どんなに飾るべきかと考えるよりも、

どんなに簡素に始末するかを考へて下さい。

ただ必要なものだけを適当な場所へちゃんと置いて置くといふことが、

最もよい飾り方なのです。』

なるほど、まさしくである。


そうだ、手紙。

おばあちゃんは、わたしに、おねえちゃんの出産祝いを

渡しといてくれと言った。

「便箋も買うて来たんじゃけど、手紙はもうええじゃろ」

と言うから、

「手紙書いて。おねえちゃん絶対よろこぶから」と言うと、

玄関を入ってすぐの薄暗い部屋で、

老眼鏡をかけたおばあちゃんは長い時間をかけて、それを書いていた。

その光景を思い出しただけで、ほほ、ほほほん、とした気持ちになるのだ。