道しるべ

電車に乗っていたら、隣に座っていた若者ふたりが、

「あ、あべのハルカスが見える」と言ってた。

その人たちは、なんとなく近くに住んでいる人ではなさそうで、

どこかに行く用事があって乗っている人っぽい。

わたしは毎日乗っているのにあべのハルカスが見えるなんて知らなかった。

読んでいた本から視線をはずして、しれっとちょっとだけ窓の外を見た。

ここからやと、あべのはあの方向なんやね、なるほどって思った。


まだ、あべのハルカス工事中のころ、バイト先に向かって歩いていたら、

高いビルが見えて、あれってあべのハルカス? って思っていたのを思い出した。

そのときも、ああ、あべのはあっちか、って思ったんやった。

からだの周りにぐわっと地図ができる。