おなじ本

ひさしぶりに図書館へ行った。

今日行ったのは、わたしの住んでいる区の図書館じゃなくて、

バイト先の近くの図書館。

ずっと前に、ここにあるでって教えてくれたのは、よっしだ。

よっしは、昔よく行ってん、雰囲気が好きやってん、と言ってた。

よっしが言う昔はきっと、小学生とか、中学生のときとかで、

もしかしたら、高校生のときかもしれないけど、

この図書館に来ていたよっしはおそらく、わたしが知らないときのよっしやな、と思った。

よっしと知り合ったのは高校でだ。

わたしの知らないよっしは、ここの階段を上がって、ここに来ていたんやな、と、

「としょかんは3Fです」と書いてある、えんぴつの絵の矢印の案内を見ながら思った。



借りた本を読むのは、ちょっとどきどきする。

友だちに借りた本は、汚したらどうしようとも思ってちょっと緊張する。

図書館で借りた本は、これのこの文字、誰か読んだんやな、って思って、

どきどきする。いや、どきどきするというより、そわそわする感じかな。


例えば、(例えば、というか、ちょっと話が一旦変わります)

ドラマだと、現在進行形でやっているときにみていると、

わたしの知らないところで、知らないひとたちが、(もちろん知っているひとも)

おなじときにおなじものをみていることになる。

本だと、全くおなじときにおなじところを読んでいることって、

ほとんどないんじゃないかな、って思う。

ワンピースとか、すごく人気がある漫画だと、

重なっていることもあるかもしれないな。それもおもしろいな。

でも、やっぱり、本は、なんか、1対1だ。

こう書くと、わたしが書きたいこととずれてくるけど、

作者とつながる感じがする。

これも、こう書くと、ちょっと違ってしまうんやけど、

例えば、作者さんがこう書きました。

書いているときは、あたまのなかや、からだのどこかに、書いたことばがあって、

それを読むと、そのことばとおなじことばが、わたしのあたまのなかや、からだに流れる。

おたがい、おなじ時間ではないけど、おなじ時間というか、なんていうか、

それです。(それかな?)

それが、おなじ本を読むと、

おなじ内容の本じゃなくて、(それもやけど)

本自体がおなじ本を読むと、(こっちのほうがもっと)

そのときの感じと似た感じがもっとして、

ここ、みたひとがいるんやって、思って、

なんだかふしぎな気持ちになる。

うれしいのかとかはよくわからないけど、なんかある。

こう書くと、おおげさになるけど、

もっとささやかに、ふわっと思って消える。